は行から始まる調査・法務の用語を、読みがなの順に並べています。用語名をクリックすると詳しい解説へ移動します。
収録7語
各用語の「詳しく読む」でも個別に開けます。
は
3語
背任罪
詳細解説会社の事務を任された人が、自分や第三者の利益のために任務に背き、会社に財産上の損害を与える犯罪のことです。
会社から事務を任された立場の人が、その任務に背いて会社に財産上の損害を与えた場合に問われる犯罪です。金銭を直接持ち出す横領と違い、不利な取引そのものは形式上の決裁を通っていることが多く、任務に背いたといえるかどうかの見極めが実務上の難所になります。横領罪との違い、取引の背後をどう確認するかは、詳細ページで解説します。
反社会的勢力
暴力や威力、詐欺的な手法を使って経済的な利益を追求する集団または個人を指す言葉です。
反社会的勢力は、暴力や威力、詐欺的な手法を使って経済的な利益を追求する集団または個人を指す言葉です。取引先や採用候補者の確認を行う場面で、判断の対象となる概念です。
詳しく解説
この言葉は、2007年6月19日に犯罪対策閣僚会議幹事会が申し合わせた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」で用いられているものです。政府の文書では、反社会的勢力は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と位置づけられています。
該当するかどうかの判断にあたっては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為や、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である、という整理が金融庁の監督指針などで示されています。属性だけを見る運用では、外形上は通常の事業者と変わらない相手を拾えないことがあります。
なお、この言葉は法令上に定義規定が置かれた用語ではありません。関連する制度としては、各都道府県の暴力団排除条例があり、内容は自治体ごとに異なります。
実務上のポイント
- 属性だけでは判別できない前提で確認の手順を組み立ててください。「暴力団かどうか」だけを見る運用では拾えません。
- 契約書に暴力団排除条項を入れ、判明した場合に契約を解除できる根拠を用意しておきます。
- 判断に迷う情報が出てきた場合は、社内で結論を出さず、弁護士や警察等の外部専門機関へ相談する手順を定めておいてください。
- 具体的な確認の方法と社内体制の作り方は、反社チェックのページで解説しています。
反社チェック
詳細解説取引先や採用候補者が反社会的勢力に該当しないかを、取引や採用の前に確認する社内手続きのことです。
取引を始める前や人を採用する前に、相手が反社会的勢力と関係していないかを確認する社内の手続きです。法律で手順が決められているわけではないため、どこまで調べれば十分といえるのかが実務上の悩みになります。確認の具体的な方法、判断に迷うグレー情報の扱い方、社内体制の作り方は、詳細ページで解説します。
ひ
1語
秘密保持義務(NDA)
契約や誓約書によって、知り得た情報を外部に開示しない義務を負わせるものです。
秘密保持義務は、業務を通じて知った情報を外部に漏らさない義務です。従業員との誓約書、取引先との秘密保持契約(NDA)といった形で、契約によって設定されます。
詳しく解説
秘密保持義務の内容は、多くの場合、当事者間の契約によって定められます。何を秘密とするか、期間をどれだけにするか、退職後も及ぶ形にするかは、契約書や誓約書の書き方によって変わります。
契約とは別に、不正競争防止法の定めが関わる場合があります。同法第2条第1項第7号は、営業秘密を保有する事業者からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、またはその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、または開示する行為を、不正競争として掲げています。この号にあたるかどうかは、その情報が同法上の営業秘密にあたるかどうかを含め、事実関係によって判断されます。
実務上のポイント
- 誓約書は「取った」だけでは足りません。入社時・異動時・退職時のどの時点で、誰の署名で、どの範囲を対象に取ったかを台帳で管理します。
- 対象範囲が「業務上知り得た一切の情報」とだけ書かれている場合、何が持ち出されたのかを後から特定しにくくなります。情報の類型ごとに整理しておくと、確認の段取りが早くなります。
- 持ち出しが疑われた時点で、その人物に適用される誓約書・契約書の版を確認します。改定前後で内容が違うことは珍しくありません。
- 契約上の義務と、法令上の保護は別に検討します。どちらか一方だけを見て判断しないでください。
ふ
2語
不正競争防止法
事業者間の公正な競争を確保するため、不正競争にあたる行為を定めた法律です。
不正競争防止法は、事業者の間で公正な競争が保たれるように、不正競争にあたる行為を類型として定めた法律です。企業実務では、退職者や取引先による情報の持ち出しが起きたときに、最初に参照される法律の1つです。
詳しく解説
同法第2条第1項は、不正競争にあたる行為を号に分けて列挙しています。営業秘密に関するもの(第4号から第10号)のほか、他人の商品等表示を使って混同を生じさせる行為(第1号)、商品の形態を模倣する行為(第3号)などがあります。ここに挙げたものがすべてではありません。
企業が実際に使う手段としては、民事と刑事の2つの筋があります。民事では、同法第3条が、不正競争によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者に差止めの請求を認めています。同法第4条は、故意または過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に損害賠償の責任を定めています。刑事では、同法第21条が営業秘密に関する一定の行為について罰則を定めています。どの手段をとれるかは、事実関係によって異なります。
実務上のポイント
- 差止めの請求は、持ち出された情報が使われる前に動く必要があります。着手の判断を遅らせないでください。
- 「不正競争にあたる行為があった」ことと、「その行為をその人物が行った」ことは別に立証します。後者は社内資料だけでは足りない場合があります。
- 情報が営業秘密として管理されていた事実を示す資料を先に確保します。同法の保護は、この点が示せることが前提になります。
- 民事と刑事のどちらを先に動かすかで、資料の集め方と開示の範囲が変わります。方針を決めてから資料の整理に入ってください。
粉飾決算
会社の財務内容を実際より良く見せるために、決算の数値を意図的に操作することです。
粉飾決算は、会社の財務状況を実際よりも良く見せる目的で、決算の数値を意図的に操作することを指します。取引先の決算書に不自然な点があるとき、与信の判断に直結する問題として検討されます。
詳しく解説
代表的な手口として、売上の計上時期を前倒しする、実体のない売上を計上する、在庫を過大に計上する、当期の費用を翌期以降に繰り延べる、債務を帳簿に載せないといったものが挙げられます。いずれも、単年度の数値だけを見ても気づきにくいという共通点があります。
なお、粉飾決算は法令上に定義規定が置かれた用語ではありません。決算の数値を操作する行為がどのような法的責任につながるかは、会社の形態や行為の内容によって異なります。決算書に不自然な点があるという事実だけから、法的な評価を導くことはできません。
取引先の与信という観点で先に必要になるのは、法的な評価ではなく、支払能力が実際にあるかどうかの見極めです。
実務上のポイント
- 数値の整合を確認します。売上の伸びと売掛金の残高の動き、在庫の回転期間、営業利益と営業キャッシュ・フローの乖離は、単年度ではなく複数年で並べて見ます。
- 決算書だけで判断しないでください。事業所や倉庫の稼働状況、従業員数、主要な取引先の評判といった、書面に現れない事実の確認が必要になります。
- 支払サイトの延長要請、決済方法の変更、担当者の交代が続くといった動きは、決算書より先に現れることがあります。取引の現場の情報を営業部門から吸い上げる仕組みを作ってください。
- 疑いの段階では、取引の停止ではなく与信枠の見直しから対応することが一般的です。断定を前提とした対応は、別のトラブルにつながるおそれがあります。
へ
1語
ペーパーカンパニー
登記上は存在しているものの、実際の事業活動の実体がほとんどない会社のことです。
ペーパーカンパニーは、登記はされているものの、実際に事業を行っている実体がほとんどない会社を指す言い方です。取引先の実態確認や、社内不正で不自然な発注先が見つかった場面で問題になります。
詳しく解説
法令上に定義がある用語ではありません。将来の事業のために設立されたまま動いていない会社や、休眠状態の会社も存在します。事業の実体が見当たらないという事実だけから、その会社の適法性を判断することはできません。
実務で問題になるのは、資金の流れや取引の実態を見えにくくする目的で使われている場合です。代金を回収できない、実体のない発注に社内の担当者が関与している、資金の流れの背後に別の関係先がある、といった事態につながります。
見分けるうえで難しいのは、登記情報だけでは判断できない点です。会社法が登記事項として定めているのは目的、商号、本店の所在場所、資本金の額、取締役の氏名といった事項であり(会社法第911条第3項)、事業の実体は含まれていません。
実務上のポイント
- 登記上の所在地を実際に確認します。看板・郵便受け・入居の状況を見るだけでも、判断材料は大きく変わります。
- 同一の住所に多数の法人が登記されていないかを確認します。バーチャルオフィスの利用そのものは問題ではありませんが、他の情報と組み合わせる材料になります。
- 連絡手段の実態を確認します。代表電話が常に転送になる、担当者名が毎回変わるといった状況は、確認を深める理由になります。
- 従業員の存在、事業に必要な設備や許認可の有無を確認します。
- 実体が確認できないことと、違法であることは別です。取引を断る判断は、事実の確認結果にもとづいて行ってください。
