か行から始まる調査・法務の用語を、読みがなの順に並べています。用語名をクリックすると詳しい解説へ移動します。
収録7語
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か
1語
拡張デューデリジェンス
書面の精査だけでは確認できない範囲まで対象を広げて行うデューデリジェンスの呼び方です。
拡張デューデリジェンスは、通常のデューデリジェンスで扱う開示資料と公開情報の精査に加えて、実地での確認まで範囲を広げる進め方を指す呼び方です。法令に定義のある用語ではなく、調査を提供する事業者がサービスの呼称として使っている表現です。
詳しく解説
通常のデューデリジェンスで確認できるのは、相手が開示した資料と、登記情報や決算書といった公開情報です。これらはいずれも過去の記録であり、書面として整った時点の情報にとどまります。
一方で、取引の判断を誤らせる事情は、書面に現れないところにあることがあります。登記上の本店に事業の実体がない、資本関係の背後に別の実質的な支配者がいる、経営陣が別会社で問題を起こしているといった事情が典型です。書面の精査に、現地での確認、関係先の確認、人物に関する確認を組み合わせる進め方が、この呼び方で示されます。何をどこまで含めるかは提供する事業者によって異なるため、依頼する際は対象範囲を個別に確かめてください。
実務上のポイント
- 範囲を広げる前に、この取引で最も避けたい事態を1つに絞ります。絞らないまま範囲だけを広げると、費用と期間が伸びる割に判断材料が増えません。
- 書面で確認できることと、実地でしか確認できないことを最初に仕分けます。両者を同じ担当に同時に進めさせると、どちらも中途半端になります。
- 実地の確認は、相手に察知されると事実そのものが変わります。着手の順序は、相手への接触が必要ない項目から組み立ててください。
- 確認結果は、判断の材料になる形で残します。「疑わしい」ではなく、いつ・どこで・何を確認したかが分かる記録にしないと、社内の決裁で使えません。
き
3語
キックバック・リベート
取引に関連して、支払を受けた側から発注側の担当者などに金銭が戻される行為のことです。
キックバックは、取引の対価を受け取った側から、発注した側の担当者などへ金銭や利益が戻される行為を指します。リベートは本来、取引条件として会社間で正規に取り決める割戻しを指す言葉ですが、実務では両者が同じ意味で使われることがあります。
詳しく解説
法令に定義のある用語ではありません。会社と会社の間で契約として取り決められ、会計処理にも反映される割戻しは、取引条件の一部として処理されます。社内で問題として扱われるのは、会社を経由せず担当者個人に渡っている場合と、会社間の取り決めであっても社内で承認されていない場合です。
購買・外注・広告の発注など、取引先の選定に裁量がある職務で起こりやすいという特徴があります。金銭が直接社外から個人へ渡るため、社内の会計データだけを見ても、不正の痕跡が残りにくいことが多くあります。
実務上のポイント
- 会計データではなく、発注の偏りから確認します。特定の取引先への発注比率、相見積りの有無、単価の推移を時系列で並べると、変化の起点が見えます。
- 稟議書・見積書・発注書の差し替えや後付けの有無を確認します。承認日と発注日の前後関係は、書類の整合性を見る手がかりになります。
- 社内資料だけでは、社外から個人への資金移動は追えません。取引先側の実態を確認しなければ、判断材料が揃わない類型です。
- 本人への確認を先に行わないでください。関係先への働きかけによって、確認できたはずの事実が失われます。
競業避止義務
従業員や役員が、会社と競合する事業を自ら行ったり競合他社へ移ったりしない義務のことです。
競業避止義務は、従業員や役員が会社と競合する事業に関わらない義務を指します。退職した社員が同業で独立した、顧客を連れて競合他社へ移ったといった場面で問題になります。
詳しく解説
従業員の退職後の競業について、法律に一般的な定めがあるわけではありません。義務を負わせるには、就業規則の定めや個別の合意といった特約が必要になります。なお在職中の取締役については、会社の事業の部類に属する取引をしようとするときに株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を要すると定められています(会社法第356条第1項第1号、第365条第1項)。
特約があれば必ず有効になるわけでもありません。経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」の参考資料「競業避止義務契約の有効性について」では、守るべき企業の利益、制限の対象業種・期間・場所的範囲、代償措置の有無といった要素を総合的に考慮するという整理が示されています。範囲を広く書けば会社が守られるというものではありません。
実務上のポイント
- 退職時に誓約書を取得し、対象となる職種・地域・期間を具体的に書きます。「一切の競業を禁止する」といった包括的な書き方は避けます。
- 違反が疑われる場合は、まず外形的な事実を確認します。新会社の登記情報、求人の掲載内容、既存顧客への接触の有無、営業活動の実態が対象です。
- 顧客情報や技術資料の持ち出しも疑われる場合は、営業秘密の観点からも検討が必要です。アクセスログや外部媒体の接続履歴は上書きで消えます。
- 特約の有効性は個別の事情によって判断されます。自社の誓約書がそのまま通用するかを社内で結論づけず、差止めや損害賠償の検討前に弁護士等の専門家にご確認ください。
業務上横領罪
仕事として他人の財産を預かり管理する立場の人が、その財産を自分のものとして処分する犯罪のことです。
業務上横領罪は、業務として他人の財産を預かり管理する立場の人が、その財産を自分のものとして処分した場合に問われる犯罪です。経理担当者による現金の抜き取りや、集金した売上金の私的流用が典型例です。
詳しく解説
刑法は横領を3つに分けています。自己の占有する他人の物の横領は単純横領罪(刑法第252条第1項)で、法定刑は5年以下の拘禁刑です。業務上自己の占有する他人の物の横領は業務上横領罪(刑法第253条)となり、法定刑は10年以下の拘禁刑と重くなります。
ここでいう「業務上」は、役職の高さを指す言葉ではありません。その財産を占有・管理することが職務に含まれているかどうかが問題になります。経理・出納・在庫管理・集金といった職務は、役職に関わらず該当し得ます。
窃盗罪との違いは、その財産を誰が占有していたかにあります。自分が占有していた財産であれば横領、他人が占有している財産を持ち出した場合は窃盗と整理されます。
実務上のポイント
- 発覚直後に本人を問い詰めると、証拠の隠滅や口裏合わせを招きます。先に客観的な資料を保全してください。
- 帳簿・伝票・入出金記録・在庫記録は、原本または改変できない形で保全します。印刷物だけを残しません。
- 被害額は単発ではなく、期間を通した記録の突き合わせで特定します。1件だけでは「例外的な処理だった」という説明を崩せません。
- 刑事告訴、民事の損害賠償請求、社内の懲戒処分は別の手続きです。選ぶ手続きによって必要な資料の水準が変わります。
- 業務上横領罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。起算点の判断は事案によって異なるため、方針を決める前に弁護士等の専門家にご確認ください。
け
2語
刑事告訴
犯罪の被害者などが捜査機関に対して被害の事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示のことです。
刑事告訴は、犯罪の被害を受けた側が捜査機関に事実を申告し、犯人を処罰してほしいという意思を示す手続きです。社内で横領や情報の持ち出しが判明した企業が、刑事責任の追及を検討する場面で出てきます。
詳しく解説
刑事訴訟法は、犯罪により害を被った者は告訴をすることができると定めています(刑事訴訟法第230条)。告訴を受けた司法警察員は、速やかに関係する書類と証拠物を検察官に送付しなければならないとされています(同法第242条)。よく混同されるのが被害届です。被害届は被害に遭った事実を届け出るもので、処罰を求める意思表示を必ずしも含みません。
実務上の問題は、告訴状を提出すればただちに受理されるとは限らないという点です。受理の可否も時期も、企業の側から見通すことはできません。受理を前提にした社内スケジュールは組まないでください。そのうえで、被害の事実・金額・期間・行為の態様を資料で具体的に示せる状態にしてから相談に臨むほうが、話は進めやすくなります。
告訴は、民事の損害賠償請求や社内の懲戒処分とは別の手続きです。同じ事案でも、求められる資料の水準が異なります。
実務上のポイント
- 告訴状の作成に入る前に、被害額・期間・行為の態様を客観的な資料で特定してください。本人の自認だけを根拠にしないでください。
- 資料は時系列で整理し、どの資料が何を示すかの対応表を作ります。捜査機関への説明にも、弁護士への相談にも同じものが使えます。
- 本人への聞き取りは資料の保全を終えてから行います。先に問い詰めると証拠の隠滅を招くおそれがあります。
- 受理の可否と時期は断定できません。告訴の方針を決める前に、弁護士等の専門家にご相談ください。
経歴詐称
採用の際に申告した学歴・職歴・資格などが、事実と異なっている状態をいいます。
経歴詐称は、履歴書や職務経歴書、面接での申告が事実と食い違っている状態を指す言葉です。入社後に判明し、処分を検討する場面で問題になります。
詳しく解説
企業実務では、就業規則にもとづく懲戒の問題として検討されるのが一般的です。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成し行政官庁に届け出ることを義務づけています。同条第9号は、表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項を記載しなければならないと定めています。
どの申告の食い違いが問題になるか、どの程度の処分が相当かは、職務の内容や申告の中身によって異なります。処分の有効性は個別の事情によって判断されるため、決定の前に弁護士等の専門家にご確認ください。
実務上のポイント
- 申告そのものを原本の形で保存します。履歴書・職務経歴書・入社時の誓約書は、何と書かれていたかが出発点になります。
- 面接での口頭の申告は記録に残りません。確認したい事項は応募書類に記載させるか、面接記録として日付入りで残します。
- 学歴・資格は発行元で確認します。卒業証明書や資格の登録簿など、発行主体が明らかな資料に当たります。
- 職歴の照会は、本人の同意を得たうえで、確認する範囲を決めてから行います。
- 食い違いが判明したら、本人に説明の機会を設け、日付・出席者・説明内容を記録します。申告が誤りだったのか、意図的だったのかは、この記録がなければ後から示せません。
こ
1語
行動調査
対象者の所在や行動について、実地の確認によって事実を記録していく調査のことです。
行動調査は、対象となる人物が、いつ・どこで・何をしていたかを実地の確認によって記録していく調査です。勤務時間中の行動、退職者の動き、役員の取引先との接触などを確かめる場面で使われます。
詳しく解説
探偵業の業務の適正化に関する法律(以下、探偵業法)第2条第1項は、探偵業務を、特定人の所在または行動についての情報を収集する目的で、面接による聞込み・尾行・張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その結果を依頼者に報告する業務と定めています。行動調査という呼び方は、このうち行動に関する情報を対象とするものを指す実務上の言い方です。
同法第6条は、探偵業者等が探偵業務を行うにあたり、この法律によって他の法令において禁止または制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害するなど個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないと定めています。個々の調査方法が適法かどうかは、この条文だけから判断できるものではありません。
実務上のポイント
- 何を確認できれば社内の判断が動くのかを先に決めます。目的が「疑いを晴らす」だけだと、記録は集まっても使いどころが決まりません。
- 確認したい行動が起きる曜日・時間帯を絞り込みます。絞り込みの材料は、勤怠記録・経費精算・社用車の走行記録など社内に残っている資料です。
- 記録は時系列で残します。日時・場所・行動が対応した形になっていないと、後から事実の順序を再現できません。
- 社内での共有範囲を着手前に決めます。対象者が調査を察知すると、確認したい行動そのものが止まります。
