横領チェックリスト50項目|自社のリスクを今すぐ診断
「横領のリスクが自社にどのくらいあるかを、客観的に把握したい」
「不正が起きる前に、管理の抜けを自分で確認しておきたい」
「横領が発覚したあと、何が問題だったのかを振り返りたい」
横領は、信頼していた担当者が、長い期間をかけて、少しずつという形で起きることが少なくありません。発覚したときには、被害がまとまった金額になっていることもあります。背景にあるのは、不正ができてしまう状況が組織の中に残っていることです。
この記事のチェックリスト50項目は、「現金・経理」「在庫・購買」「組織・体制」の3つに分けています。各項目で「はい」または「わからない」にあたる場合に1点を加え、最後にスコア別の対応指針を確認してください。
個別事案での不正の成否や、処分・請求の可否は、事実関係と証拠によって異なるため、最終判断は弁護士に確認してください。
診断の使い方
次のルールで採点してください。
| 回答 | スコア |
|---|---|
| はい(自社に当てはまる) | 1点 |
| わからない(実態を把握していない) | 1点(把握できていないこと自体がリスクのため) |
| いいえ(管理できている) | 0点 |
各カテゴリのスコアと合計を記録し、最後の「スコア別の対応指針」で自社の状況を確認してください。
このチェックリストは、不正の有無を判定するものではありません。スコアが高くても不正が起きているとは限りませんが、スコアが高いほど、横領が起きやすい状況にあるといえます。とくに危険度が高い項目に複数当てはまる場合は、対策を優先してください。
現金・経理リスク診断(15項目)
現金の取り扱い・帳簿の管理・承認の流れに関する15項目です。経理の担当者1名に業務が集中している組織では、点数が高くなりやすい傾向があります。
| No | チェック項目(「はい」または「わからない」なら1点) | 危険度 | なぜリスクになるか |
|---|---|---|---|
| 1 | 現金の出納・管理を1人の担当者だけが行っている | 高 | 確認する人がいないと、不正ができる状況になりやすい |
| 2 | 現金の実査(手元の残高の確認)を月1回以上行っていない | 高 | 確認がないと、ずれが積み重なっても気づけない |
| 3 | 帳簿残高と銀行残高の照合を、記帳した担当者本人が行っている | 高 | 記帳と照合が同じ人だと、食い違いに気づきにくい |
| 4 | 領収書のない経費の申請が認められている | 高 | 裏づけのない申請が通る状態になる |
| 5 | 小口現金の上限や使い道が、規程で決まっていない | 中 | 基準があいまいだと、支出の判断が人によって変わる |
| 6 | 経費の承認が直属の上司のみで、上位者の確認がない | 中 | 上司と部下の間で話が通ってしまうと、確認が働かない |
| 7 | 法人カードの明細を毎月すべて確認していない | 中 | 私的な利用や水増しが見つかりにくい |
| 8 | 売上金の入金確認と経理処理を同じ人が行っている | 高 | 入金の処理と記録の両方を1人が担うと、確認が働かない |
| 9 | 外部への振込を1人の承認だけで実行できる | 高 | 支払いの権限が集中している状態になる |
| 10 | 月ごとの利益と資金の動きを比べていない | 高 | ずれが続いても気づきにくい |
| 11 | 特定の勘定科目(業務委託費・交際費など)が前期より大きく増えている | 中 | 水増しや実体のない計上が混じっていることがある |
| 12 | 退職した経理担当者から、後任への引き継ぎの確認が十分でない | 高 | 引き継ぎの際に、過去の処理の問題が見つかることがある |
| 13 | 請求書の受取・承認・支払を1人が担当している | 高 | 一連の流れを1人が担うと、実体のない請求も処理できてしまう |
| 14 | 月末や期末に、売上や費用の計上が集中することが続いている | 中 | 数字の調整が行われていることがある |
| 15 | 経理の担当者が長期の休暇を取りにくい状態になっている | 中 | 担当者が長期に休むと処理の引き継ぎで問題が見つかることがあり、休めない状態が続いている場合は確認したい |
| カテゴリ1 スコア |
|---|
| / 15点 |
項目1(現金の管理が1人)、項目3(照合も本人)、項目8(入金の確認も同じ人)の3つがすべて当てはまる場合は、確認が働かない状態です。承認する人を分け、2人で確認する体制を優先して整えてください。
在庫・購買リスク診断(15項目)
在庫の管理・発注・仕入先との関係に関する15項目です。倉庫や購買の担当者に業務が集中している組織では、点数が高くなりやすい傾向があります。
| No | チェック項目(「はい」または「わからない」なら1点) | 危険度 | なぜリスクになるか |
|---|---|---|---|
| 16 | 棚卸しを年1回以下しか行っていない | 高 | 在庫の持ち出しや、廃棄を装った流出に長く気づけない |
| 17 | 棚卸しを、在庫管理の担当者本人が中心になって行っている | 高 | 管理する人が数えると、確認が働かない |
| 18 | 廃棄・除却の記録と帳簿を照合していない | 高 | 廃棄として処理された在庫の行方を確認できない |
| 19 | 特定の仕入先への発注が、特定の担当者の在職期間に集中している | 高 | 取引の判断が1人に偏っている状態になりやすい |
| 20 | 発注書・請求書・納品の確認書類がそろっていない取引がある | 高 | 実体のない取引は、書類がそろわないことが多い |
| 21 | 仕入先の実在(登記・所在地・担当者)を確認していない | 高 | 実体のない会社との取引に気づけない |
| 22 | 同じ仕入先への発注の単価が、他社と比べて高い状態が続いている | 中 | 取引の条件が適切か、確認できていない可能性がある |
| 23 | システム上の在庫と実際の在庫の差が「誤差」として処理されている | 高 | 差が続いている場合、その原因を確認できていない |
| 24 | 発注する人と、納品を確認する人が同じである | 高 | 発注と検収を1人が担うと、確認が働かない |
| 25 | 倉庫の入退室の記録や映像を、定期的に確認していない | 中 | 持ち出しがあった場合に、確認する材料が残らない |
| 26 | 購買担当者が休んだときに、代わりの人が業務を把握できていない | 高 | その人しかわからない状態は、確認が働きにくい |
| 27 | 発注先の選び方や、相見積もりのルールが決まっていない | 中 | 特定の取引先に偏っても、理由を説明できない |
| 28 | 仕入先からの接待や贈答品の受け取りについて、ルールがない | 中 | 取引先との関係が、取引の条件に影響することがある |
| 29 | 高額な備品や資産の所在を、定期的に確認していない | 中 | 社外への持ち出しや私的な利用に気づけない |
| 30 | 在庫の「不明なロス」が、一定の割合で続いている | 高 | ロスとして処理され、原因が確認されていない |
| カテゴリ2 スコア |
|---|
| / 15点 |
項目16(棚卸しが年1回以下)、項目18(廃棄の記録と帳簿を照合していない)、項目30(不明なロスが続いている)の3つがすべて当てはまる場合は、在庫の流出に気づけない状態です。まず棚卸しと記録の照合から確認してください。
組織・体制リスク診断(20項目)
管理の体制・規程・職場の状況に関する20項目です。ここの点数が高い場合は、特定の部署だけでなく、組織全体で確認が働きにくい状態といえます。
| No | チェック項目(「はい」または「わからない」なら1点) | 危険度 | なぜリスクになるか |
|---|---|---|---|
| 31 | 就業規則の懲戒事由に、横領・情報漏洩・競業行為が具体的に書かれていない | 高 | 懲戒処分は、就業規則の定めと周知が前提とされている |
| 32 | 内部通報の窓口(社内・社外)がない | 高 | 不正の把握が、偶然の発覚だけに頼ることになる |
| 33 | 退職時の誓約書(秘密保持・競業避止)を取っていない | 高 | 退職後の情報の持ち出しや顧客の引き抜きに備えられない |
| 34 | 経営層の承認がなくても、高額の支出ができる状態になっている | 高 | 支出の判断が1人に委ねられている |
| 35 | 特定の部署や担当者だけに業務が集中し、ほかの人が確認できない | 高 | 内容がわからない業務は、確認が働かない |
| 36 | システムの利用権限を、退職者や異動者を含めて定期的に見直していない | 高 | 退職した人がシステムを使える状態が残ることがある |
| 37 | 経理や人事など、重要な情報へのアクセスの記録を残していない | 高 | あとから利用の状況を確認できない |
| 38 | 引き継ぎの確認項目が決まっておらず、担当者の交代時の確認が不十分 | 中 | 前任者の処理の問題が、引き継ぎで見つからないまま続く |
| 39 | 従業員の副業を、申告してもらう形で把握していない | 中 | 競合他社での副業や情報の持ち出しに気づけない |
| 40 | 社用車や社用スマートフォンの私的利用について、規程で定めていない | 中 | 問題が起きたときに、判断の基準がない |
| 41 | 内部監査や外部監査を定期的に受けていない | 高 | 第三者の確認が入らない状態が続く |
| 42 | コンプライアンスの研修を年1回以上行っていない | 中 | やってはいけないことの共有ができていない |
| 43 | 特定の管理職や経営者に権限が集まったままになっている | 高 | 確認する人がいない状態になりやすい |
| 44 | 業務の中で把握できる範囲で、金銭に関する問題(支払いの滞りや社内での貸し借りなど)が確認されている | 中 | 本人の事情が背景になることがある。私生活を調べるという意味ではない |
| 45 | 気づいたことを上司に伝えにくい雰囲気がある | 高 | 不正に気づいても、報告されないことがある |
| 46 | フランチャイズの加盟店の売上データを、本部が確認できる契約になっているか把握していない | 高 | 加盟店の売上の状況を確認できない |
| 47 | 取引先との利益相反になり得る取引を、取締役会などで事前に承認するルールがない | 高 | 役員が関わる取引の確認が働かない |
| 48 | 退職者の後任が、数か月以上あとに業務を引き継ぐ体制になっている | 高 | 引き継ぎが遅れると、問題の発見も遅れる |
| 49 | 顧客情報や価格情報へのアクセスを、業務上必要な人に限っていない | 高 | 情報の持ち出しのリスクが高まる |
| 50 | 不正が発覚したときの初動(記録の保全・相談先)が決まっていない | 高 | 発覚後の対応が遅れると、記録が失われることがある |
| カテゴリ3 スコア |
|---|
| / 20点 |
スコア別の対応指針

以下は目安です。点数が低いから問題がない、高いから不正があるというものではありません。
| 合計スコア | 状態の目安 | 次に検討したいこと |
|---|---|---|
| 0〜9点 | 基本的な管理ができている。「わからない」が多い場合は、実態の確認から始める | 年1回の見直し。内部通報の窓口の周知 |
| 10〜19点 | 確認が働きにくい部分がいくつかある | 危険度が高い項目から改善する。就業規則や規程は弁護士・社会保険労務士に相談する |
| 20〜29点 | 管理の抜けが重なっている | 帳票やログの確認を優先する。必要に応じて、弁護士や調査会社に状況を相談する |
| 30点以上 | 確認の仕組みが全体的に足りていない | 記録の保全を先に行い、調査が必要かを含めて弁護士に相談する |
危険度が高い項目に複数当てはまる場合は、合計の点数にかかわらず相談を検討してください。とくに、項目1・3・8・9・13(現金と振込の権限の集中)、項目16・18・30(在庫の管理)、項目31・34・43・47(権限と規程)は、単独でも確認しておきたい項目です。
自社の状況をどう整理すればよいか迷う段階でも、気になっている項目をお聞きしたうえで、進め方の整理をお手伝いします。
まとめ
横領のリスクは、不正をする人がいるかどうかよりも、不正ができる状況が残っているかどうかで変わります。チェックリストの点数は、いまの状況を確認するための目安で、対策を進めれば下がっていきます。

- 現金・経理(15項目):1人に集中させない、記帳と照合を分ける、承認の流れを決める
- 在庫・購買(15項目):棚卸しを担当者以外が行う、廃棄の記録と照合する、仕入先の実在を確認する
- 組織・体制(20項目):就業規則の整備、権限の分散、内部通報の窓口、引き継ぎの手順
- 合計20点以上:管理の見直しと、必要に応じた相談を検討する
- 危険度が高い項目:点数にかかわらず、単独でも確認しておく
気になる点が見つかったあとの進め方も、状況をお聞きしたうえで一緒に整理できます。
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よくある質問(FAQ)
チェックリストの点数が高くても、不正が起きていないことはありますか?
あります。点数は、不正ができる状況がどれくらい残っているかの目安で、不正の有無を判定するものではありません。
ただし、確認が働かない状態が続くほど、問題が起きたときに気づきにくくなります。点数が高い場合は、予防のための見直しを優先してください。
チェックリストを社内で共有して使ってよいですか?
ご自由にお使いください。経営者・管理職・監査の担当者がそれぞれ確認すると、見え方の違いもわかります。
部門ごとにカテゴリ別で確認し、結果をまとめて全社の状況として整理する使い方もできます。
点数が高い場合、まず何から始めればよいですか?
危険度が高い項目から3〜5個を選び、それぞれ具体的な改善の方法を決めるところから始めてください。すべてを一度に変えようとすると、どれも中途半端になりがちです。
現金の管理を2人で確認する、棚卸しを担当者以外が行う、システムの権限を定期的に見直す、といった項目は、比較的早く取りかかれます。
