証拠能力

法務・訴訟

しょうこのうりょく Admissibility of Evidence

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最終確認日

集めた資料や記録を、裁判で証拠として取り調べてもらえるかどうかという資格のことです。

社内で不正が疑われたとき、多くの企業はまず手元の資料を集めます。ところが、集めた資料が裁判や刑事手続でそのまま使えるとは限りません。証拠能力という言葉は、この「使えるかどうか」を指します。実務でつまずくのは、資料が存在しないことよりも、存在するのに証拠として扱えない形になっていることのほうが多いといえます。

証拠能力とは

証拠能力とは、ある資料を裁判所が証拠として取り調べることができるかどうかという資格を指します。証拠能力が認められない資料は、内容がどれほど重要でも、事実認定の材料になりません。

民事訴訟法は、裁判所が判決をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断すると定めています(民事訴訟法第247条)。そのため民事訴訟では、証拠能力に原則として制限はないとされています。一方、刑事訴訟法は、公判期日における供述に代えて書面を証拠とすることなどを原則として認めていません(刑事訴訟法第320条第1項)。民事と刑事とでは、証拠の取扱いの前提が異なります。

企業実務で重要なのは、民事と刑事で前提が異なるという点です。同じ資料でも、社内の懲戒手続に使うのか、民事の損害賠償請求に使うのか、刑事告訴に使うのかによって、求められる水準が変わります。使う手続を決めないまま資料を集めると、どの手続にも足りない状態になりがちです。

証拠能力と証明力は別のものです

実務でもっとも多い混同が、証拠能力と証明力の取り違えです。証拠能力は「証拠として扱えるかどうか」という入口の問題であり、証明力は「その証拠がどの程度その事実を推認させるか」という中身の問題です。

たとえば、担当者が記憶にもとづいて後から作成したメモは、民事訴訟に提出すること自体は妨げられないと考えられます。しかし、いつ作成されたのか、どのような経緯で書かれたのかを裏づける材料がなければ、証明力は低く評価されやすいといえます。入口を通ることと、事実を認定してもらえることは、まったく別の話です。

実務で証拠能力・証明力が問題になる資料

企業からご相談をいただく場面で、資料の扱いが争点になりやすいのは次の類型です。

  • 電子データ(メール、社内チャット、会計システムのログ)。印刷物だけを保管し、元データを上書きしてしまうと、改変されていないことを後から示せなくなります。
  • 録音データ。会話に参加している当事者が録音したものか、第三者が本人に無断で機器を設置して録音したものかによって、後から取扱いを争われる度合いが変わります。誰が、どの場面で、どのように録音したかを記録に残してください。
  • 防犯カメラの映像。保存期間が短く、放置すると上書きされます。取得のタイミングが結果を左右します。
  • 従業員からの聞き取り。長時間にわたる追及や、退職を示唆した状況での聞き取りは、後から任意性を争われることがあります。
  • 私物の端末や私有車から得た情報。会社の管理権が及ぶ範囲が問題になります。

この5類型に共通しているのは、「あるかどうか」ではなく「どう押さえたか」で価値が決まるという点です。 調査の現場では、対象を特定する前に保全の手順を決めます。順序を逆にすると、確認のためにファイルを開いた時点で更新日時が変わり、改変されていないことの説明が難しくなります。

実務上のポイント

  • 資料は原本、または原本の所在が特定できる形で保全します。印刷物だけを残す扱いはしません。
  • 取得の記録(いつ・誰が・どの端末から・どの方法で取得したか)を、資料そのものと同時に残します。後から作成した記録は、作成経緯を説明できません。
  • 保全と分析を分けます。分析のために元データを直接操作すると、状態が変わります。複製を作ってから分析します。
  • 従業員への聞き取りは、客観的な資料を固めてから行います。先に聞き取ると、証拠の隠滅や口裏合わせを招くおそれがあります。
  • 社内の懲戒手続、民事の損害賠償請求、刑事告訴のどれを想定するかを、資料を集める前に決めます。想定する手続によって、必要な資料の粒度が変わります。

よくある誤解・注意点

「証拠さえあれば処分できる」とは限りません。証拠能力の問題を通過しても、その資料から何がどこまで認定できるかは別に評価されます。不正の金額や期間の特定には、単発の資料ではなく、期間を通した記録の突き合わせが必要になることが一般的です。

「本人が認めたから大丈夫」という判断にも注意が必要です。自認は重要な材料ですが、それだけで足りるとは限りません。金額や期間の特定が客観的な資料で裏づけられていなければ、損害賠償請求の場面で額を主張しきれないことがあります。また、自認を得た状況によっては、後からその経緯を争われることがあります。

「違法な方法で集めても、民事なら使える」という前提で進めないでください。証拠として使えるかどうかと、集め方そのものの責任を問われるかどうかは、別の問題です。手段に迷う場面では、実施する前に弁護士等の専門家にご確認ください。

ツミトルでの関わり

調査法人ツミトルでは、社内不正が疑われる段階からご相談をお受けしています。対象者の行動確認、取引先や関係者の実態確認について、日時・場所・行動を時系列に沿って整理した報告書としてお渡しします。ご相談の内容と調査の事実は、秘密保持を最優先に取り扱います。