探偵事務所と大手調査会社の違い|法人案件はどちらに頼むべきか
「大手の調査会社の方が信頼できそうだが、料金が高い。小さい事務所との違いは何か」
「テレビCMを打っている会社は安心感があるが、法人の不正調査でも同じ品質が期待できるのか」
「規模ではなく専門性で選ぶべきと聞いたが、専門性をどう確認すればよいのかわからない」
探偵・調査会社を選ぶ際、大手なら安心、小さい事務所は不安、と考える担当者は少なくありません。
ただ、規模そのものは、自社の事案に合うかどうかを示すものではありません。大手にも中小にもそれぞれ強みがあり、確認すべき点は同じです。
本記事では、規模による一般的な違い・料金と体制の見方・事案ごとの考え方・規模にかかわらず確認すべき点・選ぶまでの流れを整理します。
調査報告書がどう評価されるかは、事案の内容と証拠全体によって異なるため、法的な見通しは弁護士に確認してください。
規模による一般的な違い
まず、規模の違いがどこに表れやすいかを整理します。ただし、以下はあくまで一般的な傾向で、個々の会社によって実態は異なります。
| 比較の観点 | 規模の大きい会社で見られやすい点 | 規模の小さい事務所で見られやすい点 |
|---|---|---|
| 体制 | 調査員の数が多く、複数の案件や広い地域に同時に対応しやすい | 担当者が固定されやすく、案件の経緯を把握したまま進めやすい |
| 受付と対応範囲 | 受付の時間帯や対応地域が広いことが多い | 対応地域が限られる場合がある |
| サービスの形 | 標準化されたプランが用意されていることが多い | 案件ごとに調査の組み立てを相談しやすい場合がある |
| 扱う案件 | 個人向けと法人向けの両方を扱うことが多い | 特定の分野に絞って扱っている場合がある |
どちらが法人案件に適しているかは、規模では決まりません。規模の大きい会社でも法人向けの担当部門を設けている場合がありますし、規模の小さい事務所でも法人案件を扱っていない場合があります。確認すべきなのは、自社の事案と同じ種類の案件を、どのように扱ってきたかです。
料金と体制の見方
大手は高く、小規模は安い、というイメージは必ずしも当てはまりません。料金と体制は、次の点で見てください。
料金で確認すること
- 見積もりに、時間単価・調査員の人数・経費の内訳が書かれているか
- 標準のプランに含まれる範囲と、含まれない範囲が分かるか
- 費用の上限を設けた契約ができるか
- 追加費用が発生する条件が、書面で示されるか
金額の大小だけで比べると、含まれている範囲の違いを見落とします。同じ条件で見積もりを取り、内訳を並べて比べてください。
体制で確認すること
- 案件の途中で担当者が変わるか、固定されるか
- 複数の拠点や広い地域での調査が必要な場合に、対応できるか
- 法人案件を扱う担当者や部門があるか
- 依頼者側の弁護士と、直接やり取りしてもらえるか
事案の特性ごとの考え方
事案の特性によって、重視すべき点が変わります。規模で決めるのではなく、次の観点で候補を比べてください。
| 事案の特性 | 重視したい点 | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 複数の拠点で同時に調査が必要 | 調査員の人数と、対応できる地域 | 同時に何か所まで対応できるかを聞く |
| 懲戒や訴訟を見据えている | 報告書の形式と、弁護士との協力 | 報告書のサンプルと、弁護士と進めた経験を聞く |
| 情報管理がとくに重要 | 担当者の範囲と、情報の扱い | 案件の情報を知る人の範囲と、契約書での守秘義務の扱いを聞く |
| 長期間の調査になりそう | 体制の安定と、費用の見通し | 期間が延びた場合の体制と費用の条件を聞く |
| 役員など上位者が対象 | 独立性と、情報管理 | 社内の誰とやり取りするか、情報が社内に広がらない進め方を聞く |
同じ規模の会社でも、ここでの回答は大きく異なります。規模ではなく、回答の具体性で判断してください。
規模にかかわらず確認すべき点
法人案件で調査会社を選ぶ際に大切なのは、規模ではなく、自社の事案に合う経験があるかどうかです。次の3つの観点で確認できます。
観点1:弁護士との協力の仕方
- 弁護士と連携して進めた案件では、どのように役割を分けたか
- 依頼者側で依頼している弁護士と、直接協力して進められるか
- 調査の内容を決める段階から、弁護士と相談して進められるか
なお、調査会社から弁護士の紹介を受ける場合、紹介に対して見返りがやり取りされる関係は、弁護士法上の問題になり得るとされています。紹介を受けるときは、弁護士と直接契約してください。
観点2:報告書の中身
- 報告書のサンプル(形式のみ)を見せてもらえるか
- 日時・場所・行動が時系列で並び、事実と推測が区別されているか
- 自社の事案で、何が示せて、何は示せない見込みかを説明できるか
報告書がそのまま処分や手続きに使えるかは、事案の内容と証拠の全体で決まり、調査会社が単独で保証できるものではありません。「必ず使えます」と言い切る会社より、線引きを説明できる会社のほうが判断しやすくなります。
観点3:事案の種類ごとの理解
不正の種類によって、求められる理解は異なります。自社の事案について、次のような点を説明できるかを確認してください。
- 情報漏洩:社内の記録で確認できることと、外で確認が必要なことの切り分け
- 横領・経費の不正:社内の帳簿や記録との照合と、調査で補う部分の切り分け
- 役員の不正:社内の誰にも知られずに進める方法と、弁護士や第三者との役割分担
- 加盟店の調査:契約書で本部に認められている範囲と、客として確認できる範囲の切り分け
「どんな案件でも対応できます」という回答より、「この種の案件ではこう進め、これは行いません」という説明のほうが、判断の材料になります。
自社の事案にどの会社が合うか判断がつかない段階でも、状況整理からご相談ください。
選ぶまでの流れ
規模ではなく、自社の事案に合うかという観点で、次の流れで進めてください。
STEP 1:事案の特性を整理する
- 調査の目的を決める。事実を確認したいのか、懲戒や訴訟の検討に使いたいのか
- 急ぐ事情があるかを確認する。期限や、記録が消えるおそれ
- 情報が漏れると困る相手が社内にいるかを確認する
STEP 2:候補を2〜3社に絞る
- 法人向けの調査について、ウェブサイトで具体的に説明している会社を探す
- 依頼している弁護士がいれば、心当たりのある会社を聞いてみる
- 規模の異なる会社を含めて比べると、違いが分かりやすい
STEP 3:初回相談で確認する
候補を絞ったら、初回相談で届出番号・法人案件の実績・報告書・費用などを確認します。規模にかかわらず、確認する項目は同じです。
具体的な質問と、回答で見るポイントは、次の記事で一覧にしています。
法人が探偵・調査会社を選ぶときの完全ガイド|比較ポイントと失敗しない依頼の仕方
STEP 4:説明の具体性で判断する
できるという回答だけでなく、どう進めるか、何はできないかまで説明する会社を選んでください。
その場での契約を急がせる、今決めないと料金が上がると伝える、といった対応をする会社には注意が必要です。
まとめ
探偵事務所と大手調査会社のどちらを選ぶかについて、規模そのものは判断の基準になりません。
規模の大きい会社にも小さい事務所にもそれぞれ強みがあり、確認すべきなのは、自社の事案に合う経験と説明があるかどうかです。
- 規模の大きい会社は体制や対応地域に、小さい事務所は担当者の固定に強みが出やすい。ただし個々の会社で異なる
- 料金は金額の大小ではなく、含まれる範囲と内訳で比べる
- 事案の特性(拠点の数・手続きの見通し・情報管理・期間・対象者)ごとに、重視する点を決める
- 規模にかかわらず、弁護士との協力の仕方・報告書の中身・事案の種類ごとの理解の3点を確認する
- 報告書が必ず使えると言い切る会社より、線引きを説明できる会社を選ぶ
「どこに頼むべきか判断できない」という段階でも、状況をお聞きしたうえで、調査の方向性と費用感をご説明します。他社との比較検討も歓迎します。
関連記事:探偵業法とは?合法的な調査の範囲と依頼者の責任をわかりやすく解説
よくある質問(FAQ)
依頼した調査会社の報告書が不十分だった場合、別の会社に依頼し直すべきですか?
依頼し直す前に、弁護士に既存の報告書を見てもらうことを推奨します。どこまで使えそうか、何が足りないかを確認できれば、足りない部分だけを補う調査で済む場合があります。
すべてをやり直すと費用が二重にかかります。ただし、対象者に調査のことが伝わっている場合は、追加の調査で記録を得にくくなることがあります。
個人向けの調査も扱っている会社に、法人案件を依頼しても大丈夫ですか?
個人向けの案件を扱っていること自体は、判断の基準になりません。法人案件を担当する人や部門があるか、自社の事案に近い案件を扱ったことがあるかを確認してください。
「なんでも対応します」という回答より、法人案件の担当者から具体的な進め方の説明がある場合のほうが、判断しやすくなります。
弁護士に調査会社を紹介してもらうことはできますか?
企業の不正対応を扱う弁護士であれば、協力して進めた経験のある調査会社を知っている場合があります。先に弁護士に相談し、調査が必要と判断された段階で、心当たりを聞くという進め方もあります。
紹介を受けた場合も、本記事の確認ポイントで判断してください。調査会社とは直接契約し、紹介の見返りがやり取りされるような関係がないかも確認しておくと安全です。
