探偵業法とは?合法的な調査の範囲と依頼者の責任をわかりやすく解説
「探偵(調査会社)に依頼したいが、依頼自体が違法にならないか不安」
「調査の内容によっては自社が問題になるリスクがあると聞いたが、何がOKで何がNGか判断できない」
「どの調査会社が法令を遵守しているか、依頼前に確認する方法がわからない」
探偵・調査会社への依頼を検討している企業担当者から、最もよく寄せられる不安が「法的に問題がないか」という点です。
探偵業は法律によって規制されており、届出を行った業者が適法な方法で調査を行い、依頼の目的も正当であれば、原則として法的な問題は生じません。
しかし、調査方法によっては違法になるケースがあり、その場合は依頼者にも責任が及ぶことがあります。
「調査会社に任せれば何でも大丈夫」という認識は誤りです。
本記事では、探偵業法の概要・合法的な調査の範囲・届出制度・依頼者の注意点・違法業者の見分け方・法人向けの選定チェックポイントまで、依頼前に必要な知識を整理します。
個別事案における調査の適法性や、依頼者が負う責任の範囲は、目的と方法によって異なるため、最終判断は弁護士に確認してください。
探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)とは?

探偵業法(正式名称:探偵業の業務の適正化に関する法律)は、2006年に公布され、2007年6月に施行された法律です。探偵業の届出制度を設け、業務の適正化・依頼者の保護・社会的な弊害の防止を目的としています。
| 主な規定 | 内容 |
|---|---|
| 届出義務(4条) | 探偵業を営むには、営業所ごとに、所在地を管轄する都道府県公安委員会への届出が必要。届出なしでの営業は禁止 |
| 名義貸しの禁止(5条) | 自己の名義をもって他人に探偵業を営ませることの禁止 |
| 業務の実施の原則(6条) | 権限を濫用してはならず、人の生活の平穏を害するなど、個人の権利利益を侵害しないようにしなければならない |
| 依頼者からの書面の受領(7条) | 契約前に、調査結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いのために用いない旨を示す書面を、依頼者から受け取る義務 |
| 重要事項の説明(8条) | 契約前に業務の内容・方法・料金などを記載した書面を交付して説明し、契約時にも書面を交付する義務 |
| 業務実施の規制(9条) | 依頼者が調査結果を違法行為に用いる意思があると知ったときは、業務を行ってはならない |
| 秘密の保持(10条) | 業務上知り得た秘密を、正当な理由なく漏らすことの禁止。罰則あり |
探偵業法は「探偵が違法なことをしてはいけない」という規制と同時に、「依頼者の目的が犯罪や違法な差別的取扱いに使われる場合は業務を行ってはならない」という規定も置いています。
依頼者側にも、適法な目的での依頼という責任があります。契約前に、目的を確認する書面への記入を求められるのはこのためです。
探偵が合法的にできる調査の範囲
探偵業法2条は、探偵業務を「他人の依頼を受けて、特定人の所在または行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として、面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その結果を当該依頼者に報告する業務」と定義しています。
| 合法的にできる調査 | 違法または問題になる調査 |
|---|---|
| 公道・公共の場での行動観察・尾行・張り込み | 私有地への立入りや、室内を対象とした撮影 |
| 近隣・関係者への聞き込み | 身分や目的を偽っての聞き込み |
| 公開情報(商業登記・SNS・求人情報)の収集・分析 | 不正な手段による個人情報の取得 |
| 公道上での対象者の車両・移動手段の記録 | 本人所有の車や私物への無断のGPS機器の取付け |
| 公共の場での写真・動画の撮影 | 住居等に立ち入っての録音機器の設置、通信の傍受 |
| 依頼者が権限を持つ業務用端末・社内システムの記録の確認 | 第三者のスマートフォンや個人アカウントへの不正アクセス |
合法の基本線は「公道・公共の場での調査」です。私有地への立入り、無断のGPS取付け、個人端末への不正アクセスは、探偵業者が行った場合でも違法になり得ます。
なお、盗聴という行為そのものを一律に処罰する規定はありません。問題になるのは、その手段です。他人の住居や事務所に立ち入って機器を設置すれば住居侵入罪、他人の通信設備に接続すれば有線電気通信法、無線通信を傍受してその内容を用いれば電波法が問題になります。私用車や私物への無断のGPS取付けは、ストーカー規制法の対象になることがあります。
依頼者にとって重要なのは、どの法律に触れるかよりも、こうした方法で得た資料は法的手続きで使えず、依頼した側の責任も問われ得るという点です。
探偵業者の届出制度と確認方法
探偵業を営むには、都道府県公安委員会への届出が必要と定められています(探偵業法4条)。
届出をせずに探偵業を営むことは罰則の対象とされており、届出をしていない業者に依頼すること自体がリスクを伴います。
届出制度の概要
- 届出先:営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会
- 届出番号:届出受理後に交付される番号(例:東京都公安委員会 第〇〇〇〇号)
- 標識の掲示義務:営業所の見やすい場所に、届出番号などを記載した標識を掲示する義務がある
- 欠格事由:禁錮以上の刑に処せられた者、暴力団関係者などは届出ができない
依頼前に届出番号を確認する方法
調査会社に依頼する前に、届出番号を確認してください。
届出をしている調査会社は、番号を開示することに支障がありません。開示を渋る、確認を求めると話をそらすといった対応をする業者への依頼は避けてください。
- ウェブサイトに届出番号が掲載されているか確認する
- 問い合わせ時に「届出番号を教えてください」と直接尋ねる
- 面談時に、営業所に掲示された標識の提示を求める
- 届出の有無は、営業所を管轄する警察署の生活安全課に問い合わせて確認できる場合がある
依頼者にも責任がある?依頼時の注意点

探偵業法は、依頼者が調査結果を違法行為に用いる意思があると知ったときは、探偵業者は業務を行ってはならないと定めています(9条)。契約前に、犯罪行為や違法な差別的取扱いに用いない旨の書面を依頼者から受け取ることも、同法が定めています(7条)。
逆に言えば、こうした目的で調査を依頼した場合、依頼者自身も責任を問われるリスクがあります。
| 責任を問われるリスクがあるケース | 具体的な状況 |
|---|---|
| つきまとい目的での依頼 | 元交際相手の行動確認・居場所の特定など、ストーカー規制法に抵触する目的での依頼 |
| 違法な手段を指示した場合 | 「盗聴してほしい」「GPSを無断で取り付けてほしい」など、違法な調査方法を指示した場合 |
| 調査結果の悪用 | 適法に得た結果を、嫌がらせや、根拠を欠く解雇の材料として使用した場合 |
一方、従業員の勤務実態、競業行為、情報漏洩の確認など、業務上の正当な目的で、適法な方法による調査を依頼することは問題ありません。目的と方法の両方が適法であることが条件になります。
「調査会社に任せたから自社には責任がない」は誤りです。違法な調査方法を依頼・指示した場合、依頼者も責任を問われ得ます。調査の目的と方法を依頼前に確認してください。
違法な調査を行う業者の見分け方
届出をしていない業者や、違法な調査方法を使う業者が存在します。
法人が調査会社を選ぶ際は、次のサインに注意してください。
避けたほうがよい業者のサイン
- 届出番号を開示しない・確認を求めると話をそらす
- 「盗聴可能」「本人に知られずにGPS追跡」「メールの中身を見られる」など、違法な方法を提案する
- 契約前の重要事項説明書面を出さない・見積もりを書面で示さない
- 「どんな調査でもできます」と、できることの範囲を説明しない
- 会社の所在地・代表者名を開示しない・営業所が確認できない
- 料金の上限や追加費用の条件が示されないまま契約を求める
届出をしている調査会社の特徴
- 届出番号をウェブサイト・見積書・契約書に明記している
- 調査方法について、何ができて何ができないかを明確に説明する
- 契約前に重要事項説明書面を交付し、契約時にも書面を交わす
- 報告書の形式と、どこまでを裏づけとして残せるかを具体的に説明できる
- 弁護士との連携について、実際の対応範囲を説明できる
法人が探偵を選ぶときの5つのチェックポイント

法人が調査会社を選ぶ際には、個人の依頼とは異なる観点が必要です。報告書を懲戒処分や法的手続きの資料として使えるかどうかが、調査の価値を左右します。
| No | チェックポイント | 確認方法・判断基準 |
|---|---|---|
| ① | 都道府県公安委員会への届出番号 | ウェブサイト・契約書・見積書に届出番号が明記されているか確認する |
| ② | 調査方法の適法性の明示 | 使用する方法と、行わない方法の両方を、書面で示せるか確認する |
| ③ | 報告書の内容と形式 | 日時・場所・行動が時系列で並び、写真などの裏づけが付くか。事前にサンプルの提示を求める |
| ④ | 弁護士との連携 | 依頼後に弁護士と連携できるか、紹介を受けられるかを確認する |
| ⑤ | 費用・契約の透明性 | 見積もりを書面で提示し、上限金額・追加費用の条件が明確か確認する |
報告書をそのまま処分の根拠にできるかどうかは、事案と証拠の全体によって決まります。「必ず使える」と説明する業者よりも、何が示せて何が示せないかを線引きできる業者を選んでください。
争いが訴訟に進んだ場合に、調査員の陳述書の提出や証人尋問への対応が必要になることがあります。
対応可能かどうかは会社によって異なるため、法的手続きを視野に入れている場合は、依頼前に確認しておくと安全です。
まとめ

探偵業法は、探偵業者の業務の適正化と依頼者の保護を目的とした法律です。
適法な目的で、適法な方法による調査を依頼するのであれば、原則として法的な問題は生じません。
重要なのは、届出をしている業者を選ぶこと、適法な目的で依頼すること、調査方法の範囲を理解しておくことの3点です。
- 探偵業者は都道府県公安委員会への届出が義務。届出番号は依頼前に必ず確認する
- 合法の範囲は公道・公共の場での観察、聞き込み、公開情報の収集。私有地への立入り、無断のGPS取付け、不正アクセスは違法になり得る
- 違法な方法を指示して依頼した場合、依頼者も責任を問われ得る
- 契約前に重要事項説明書面が交付されるか、目的を確認する書面を交わすかを確認する
- 法人の選定基準は届出番号・調査方法の明示・報告書の形式・弁護士連携・費用の透明性
「依頼前に法的な問題がないか確認したい」「どこまでが適法な範囲か判断したい」という段階でも、ご相談いただけます。
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よくある質問(FAQ)
探偵業の届出をしていない業者に依頼した場合、依頼者にも責任がありますか?
届出の有無を知らずに依頼しただけで、依頼者が刑事責任を問われることは通常ありません。
ただし、届出をしていない業者は、適法な方法への配慮も不十分である可能性があります。違法な方法で集めた資料は法的手続きで使えず、依頼した側が責任を問われるリスクも生じます。届出番号の確認は、依頼者自身を守るための確認です。
業務用GPSを社用車に設置して位置情報を取得することは合法ですか?
就業規則への明記と従業員への事前の周知を行ったうえで、目的を業務管理に限り、勤務時間内に限定していれば、直ちに違法とはなりません。
裁判例では、勤務時間外や休日を含む継続的な位置情報の取得がプライバシー侵害と判断された例があります。私用車や私物への無断の取付けは、ストーカー規制法の対象になることがあります。導入前に規程の整備と弁護士への確認を推奨します。
調査結果を懲戒処分の根拠として使えますか?
適法な方法で収集された調査報告書は、懲戒処分を検討する際の資料になります。ただし、報告書があれば処分が有効になるわけではありません。
懲戒処分には、就業規則に懲戒事由と処分の種類が定められ、従業員に周知されていることが前提とされています。報告書は、社内の勤怠記録・業務記録・本人からの聴取と組み合わせて使ってください。処分の前に弁護士と評価を行うことを推奨します。
調査を断られた場合、別の業者に依頼できますか?
断られる理由はさまざまです。対応エリアや稼働状況、専門外といった事情であれば、他社に相談して問題ありません。
ただし、依頼の目的が違法行為に用いられるおそれがあることを理由に断られた場合は、探偵業法上、他社も同じ判断をします。その場合は、何を確認したいのかを整理し直すところから相談してください。
