不正調査の費用相場まとめ|ケース別料金シミュレーション
「調査を依頼したいが、どのくらいの費用がかかるか見当がつかない」
「予算を稟議に上げる前に、費用の概算を把握しておきたい」
「ケースによって費用が変わると聞いたが、自社の状況でどのくらいになるか知りたい」
不正調査の費用は、何を、誰が、どのくらいの期間、どのような目的で調べるかによって大きく変わります。依頼先によって料金の設定も幅が広く、予算を立てにくいと感じる方は少なくありません。
本記事では、不正調査の費用の構成を整理したうえで、横領・情報漏洩・勤怠の3つの事例について、仮定をおいた費用の試算を示します。自社の状況に近い事例で大まかな費用感をつかみ、そのうえで具体的な見積もりの相談に進んでください。
個別事案で必要になる調査や手続き、その費用は、事案の内容と依頼先によって異なるため、見積もりは各依頼先で、法的な見通しは弁護士に確認してください。
不正調査の費用の全体像
不正調査の費用は、主に調査会社への依頼費用、フォレンジック会社への依頼費用、弁護士費用で構成されます。どれが必要になるかは、事案の性質と、処分や請求まで進むかどうかによって変わります。
費用を左右する4つの要素

| 要素 | 費用が上がりやすい条件 | 費用が抑えやすい条件 |
|---|---|---|
| 調査の日数 | 長期間・複数日にわたる | 1日・短時間で済む |
| 調査員の数 | 複数人・複数の場所で同時に行う | 1名で足りる |
| 調査の方法 | 機器の解析・覆面調査・複数の方法の組み合わせ | 外での行動の記録のみ |
| 手続きの有無 | 訴訟・告訴・仮処分まで進む | 事実の確認や社内の処分で完結する |
調査会社・フォレンジック会社の費用の内訳
- 調査費用:時間単価と時間数、または日当と日数
- 調査員の交通費・宿泊費:遠方での調査の場合
- 報告書の作成費用:料金に含まれる場合と、別になる場合がある
- 機器の解析費用:PCやスマートフォンの解析が必要な場合。専門のフォレンジック会社に依頼する
弁護士費用の内訳
弁護士の報酬は、事務所ごとに自由に定められており、幅があります。以下は大まかな目安です。
- 相談料:初回無料の事務所から、1時間あたり数万円程度まで
- 調査の設計や証拠の評価:時間単位で算定されることが多い
- 内容証明の送付や交渉:着手金などが発生する
- 訴訟・告訴への対応:着手金と成功報酬など。事案の規模で大きく変わる
このほか、仮処分を申し立てる場合は、弁護士費用とは別に、裁判所から担保金の供託を求められることが多くあります。担保金は事案によって金額が異なり、予算を立てる際に見落としやすい項目です。
以下の試算は、仮定をおいた一例です。依頼先によって金額は大きく異なり、進むにつれて追加の調査や手続きが必要になることもあります。この金額ですべてが完結するという前提ではなく、初期の費用感をつかむための参考にしてください。
事例1:横領調査の試算

想定:経理担当者による着服の疑い(推定被害額200万円・3年間)
| 段階 | 担当 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 初期の相談・方針の整理 | 弁護士 | 法的な評価と、確認すべき記録の整理 | 3万〜10万円 |
| 機器の解析 | フォレンジック会社 | 業務用PC1台の複製・ログの解析・削除データの復元 | 25万〜50万円 |
| 外での確認(必要な場合) | 調査会社 | 社内の記録だけでは確認できない事実がある場合に、2〜3日の行動の記録 | 15万〜30万円 |
| 報告書と記録の整理 | 弁護士・調査会社 | 記録の評価と、処分の方針の整理 | 5万〜15万円 |
| 返還の請求・交渉 | 弁護士 | 内容証明・交渉・返済合意書の作成 | 10万〜30万円 |
| 合計の試算 | 確認しておきたい点 |
|---|---|
| 弁護士:約18万〜55万円 フォレンジック会社:約25万〜50万円 調査会社(行う場合):約15万〜30万円 合計:約60万〜135万円 | 回収できるかは、相手方の資産状況や返済の意思によります。費用をかけても回収できるとは限らないため、回収の見通しを弁護士に確認したうえで、どこまで費用をかけるかを決めてください |
費用を抑えるには、弁護士に先に相談して調査の優先順位を決めること、解析する機器を必要なものに絞ることが有効です。社内の記録で事実が確認できる場合は、外での確認を行わずに進められることもあります。
事例2:情報漏洩調査の試算

想定:退職者が顧客リストを持ち出し、競合他社で使っている疑い
| 段階 | 担当 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 初期の相談・方針の整理 | 弁護士 | 営業秘密として保護されるか、差止めを検討できるかの確認 | 3万〜10万円 |
| 機器の解析 | フォレンジック会社 | 退職前後のPCのUSB接続・メール転送・クラウドへのアップロードの記録の解析 | 25万〜50万円 |
| 外での確認 | 調査会社 | 持ち出しの記録を踏まえ、元顧客への接触の状況を記録。5〜10日 | 30万〜70万円 |
| 差止めの仮処分の申立て | 弁護士 | 申立書の作成・提出・審尋への対応 | 30万〜60万円 |
| 損害賠償の請求 | 弁護士 | 損害額の算定・請求・交渉。必要に応じて訴訟 | 20万〜80万円以上 |
| 合計の試算 | 確認しておきたい点 |
|---|---|
| 弁護士:約53万〜150万円 フォレンジック会社:約25万〜50万円 調査会社:約30万〜70万円 合計:約110万〜270万円 ※仮処分の担保金は別途 | 差止めが認められるかは、情報が秘密として管理されていたかなどによって決まり、申し立てれば止められるものではありません。担保金が必要になることも含めて、見通しを弁護士に確認してください |
元顧客を訪問しているという記録だけでは、名刺や記憶によるものか、持ち出した情報によるものかを区別できません。外での確認は、社内に残る持ち出しの記録と組み合わせて初めて意味を持ちます。先に社内の記録を確認してから、外での確認が必要かを判断してください。
差止めを急ぐ場合は、短期間で資料を整える必要があるため、弁護士費用が高くなる傾向があります。損害賠償を中心に進める場合は、時間をかけて記録を積み上げるため、費用が段階的に発生します。急ぐ必要性と回収の見通しを弁護士と確認したうえで、手続きの順番を決めてください。
事例3:勤怠調査の試算

想定:直行直帰の社員の勤務実態の確認(申告とのずれが疑われる)
| 段階 | 担当 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 社内の記録の確認 | 社内 | 入退室の記録・PCのログオフ時刻・日報の照合 | 社内の人件費のみ |
| 外での確認 | 調査会社 | 申告された勤務時間中の行動の記録。3〜5日 | 15万〜40万円 |
| 弁護士への確認 | 弁護士 | 記録の評価と、処分の重さが釣り合っているかの確認(1〜2時間) | 3万〜6万円 |
| 処分の実施 | 社内(弁護士の助言のもと) | 本人からの聴取・処分の通知 | 弁護士への相談1〜3回分 |
| 合計の試算 | 確認しておきたい点 |
|---|---|
| 調査会社:約15万〜40万円 弁護士:約5万〜15万円 合計:約20万〜55万円 | 懲戒処分は、就業規則に懲戒事由と処分の種類が定められ、周知されていることが前提とされています。また、払いすぎた賃金を退職金などから一方的に差し引くことは当然にはできないとされており、調査費用を賃金の返還で回収する前提で考えないでください |
直行直帰の虚偽申告は、社内の記録だけでは確認できないことが多い類型です。社内の記録で初期の情報を整理し、外での行動を記録し、処分の妥当性を弁護士に確認する、という3つの段階が基本になります。まず短い日数で実施し、必要に応じて追加することで、費用を抑えながら確認を進められます。
自社の状況でどのくらいの費用になるか知りたい場合も、状況をお聞きしたうえで概算をお伝えします。
予算の立て方
いくら用意すればよいかは、次の順序で考えてください。
ステップ1:被害額と回収の見通しを先に整理する
まず、この不正による損害がおおよそいくらか、手続きで回収できる見通しがあるか(相手方の資産や返済の意思)を、弁護士に評価してもらってください。そのうえで、どこまで費用をかけるかの上限を決めます。
なお、費用をかける目的は回収だけではありません。不正を止めること、適切な処分を行うこと、再発を防ぐことも目的に含まれます。回収の見込みだけで判断せず、何のために調べるのかを整理してください。
- 被害額が比較的少額(100万円未満の目安):社内での確認と弁護士への相談1〜2回で進めることを目標にする。予算の目安は10万〜20万円程度
- 被害額が100万〜500万円程度:調査会社と弁護士を組み合わせて記録を固める。予算の目安は50万〜150万円程度
- 被害額が500万円以上:機器の解析・外での確認・弁護士を組み合わせた対応。予算の目安は100万〜300万円程度以上
ステップ2:費用の上限を決めた契約にする
調査会社に依頼する際は、費用の上限を設けた契約ができるかを事前に確認してください。上限を設けられない場合は、延長や追加の条件を書面で確認します。
弁護士費用についても、各段階での着手金や成功報酬の考え方を先に確認しておくと、想定外の費用を防げます。
ステップ3:稟議に使える根拠をそろえる
社内で調査費用の稟議を上げる場合は、次の資料が根拠になります。
- 被害額の概算と、手続きの見通しについての弁護士の意見
- 調査しない場合のリスク(不正の継続・時効の進行・記録の消失)の具体的な説明
- 調査会社と弁護士の、書面での見積書
金額の安さだけで依頼先を選ぶと、必要な範囲の調査が行われないことがあります。見積もりに含まれる範囲、報告書の形式、何が示せて何が示せないかの説明を比べたうえで選んでください。
まとめ
不正調査の費用は、何を、誰が、どのくらいの期間、どのような目的で調べるかによって大きく変わります。3つの試算を参考に、自社に近い事例の費用感をつかんだうえで、具体的な見積もりの相談に進んでください。
- 費用を左右する4つの要素は、調査の日数・調査員の数・調査の方法・手続きの有無
- 横領調査の試算:約60万〜135万円(機器の解析・外での確認・弁護士)
- 情報漏洩調査の試算:約110万〜270万円(仮処分を含む場合)。担保金は別途
- 勤怠調査の試算:約20万〜55万円(外での確認・弁護士への確認)
- 費用をかけても回収できるとは限らない。回収の見通しと、調べる目的を先に整理する
- 予算は、被害額と回収の見通しの整理、上限を決めた契約、稟議の根拠の準備の順で立てる
自社の事案でいくらかかるかは、具体的な状況をお聞きしないと算出が難しい部分です。状況をお伝えいただければ、概算の費用感と進め方をご説明します。
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よくある質問(FAQ)
調査費用を加害者に請求することはできますか?
認められる場合があります。横領や情報漏洩などの不法行為が認められた場合、調査費用の一部が損害として認められることがあります。
ただし、全額が損害として認められるとは限らず、行為との結びつきや費用の妥当性が問われます。調査費用を請求に含めることを前提に進める場合は、事前に弁護士に確認してください。
調査を途中で止めた場合、費用はどうなりますか?
契約の内容によって異なります。時間や日数で料金が決まる場合は、実施した分の費用が発生します。定額のプランの場合は、途中で解約したときの返金の条件を事前に確認してください。
費用のトラブルを防ぐため、中止や解約の条件と、その場合の精算の方法を、契約書に明記してもらってください。
調査費用は会社の経費として計上できますか?
業務に関連する支出として経費に計上できる場合がありますが、税務上の扱いは状況によって異なります。調査の目的と内容の記録、契約書や領収書を保管したうえで、税理士に確認してください。
また、相手方から調査費用や損害の一部を回収した場合の扱いについても、あわせて税理士に確認しておくと安心です。
