【休職診断の裏側】不動産業界で増える休職不正利用の実態|人事調査で事実確認する方法と注意点
「診断書は出ているが、生活状況に違和感がある」
「休職中なのに、別の仕事をしているという噂がある」
「本当に就労不能な状態なのか判断できない」
不動産業界では、成果主義・長時間労働・対人ストレスの影響から、うつ病などを理由にした休職制度の利用が珍しくありません。
一方で近年、休職手当の受給を目的とした虚偽申告の可能性が疑われるケースで、企業側が「どう確認すべきか分からない」と悩む相談も増えています
本記事では、不動産会社が実際に人事調査を行った事例をもとに、適法かつ慎重に事実確認を行う方法と注意点を分かりやすく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
本記事は、不動産会社の経営者や人事担当者の方に向けた内容です。
特に、「休職者の生活実態に違和感があるものの、診断書があるため軽率に動けない」と対応に苦慮されている人事担当者の方にとって、実務の参考になるポイントをまとめています。
また、休職制度の不正利用リスクを適切に管理したい雇用者の方や、社労士と連携して対応を検討中の総務担当者にとっても、役立つ内容となっています。
- 不動産会社の経営者・人事担当者
- 休職者の行動や生活実態に違和感がある方
- 診断書はあるが業務不能の実態が見えない方
- 休職制度の不正利用リスクを適切に管理したい方
不動産業界で休職トラブルが起きやすい背景

不動産業は、その業界構造からメンタル不調を訴える従業員が出やすい一方で、休職制度の「不正利用」が疑われやすいという構造的な要因も抱えています。
成果主義・歩合制による精神的プレッシャー
不動産業の営業職は、数字で評価される「歩合制・成果主義」の文化が根深い業界です。
実績が振るわなくなるのと同時に、顧客からのクレームや上司からのプレッシャーが重なり、メンタル不調を訴える従業員が発生しやすい背景があります。
しかしその一方で、この強いプレッシャーから一時的に逃れるために休職制度を利用する、という動機が生まれやすい側面(リスク)も持ち合わせています。
休職中も給与・手当が続く制度設計
多くの企業では、メンタル不調を含む病気での休職中も、給与や手当が一定額支給されます。
この制度自体は従業員を守るために正当なものですが、見方を変えれば「安定した収入を得ながら長期で休める」という利点があり、これが不正利用の動機になるリスクも潜んでいます。
在宅勤務や外出機会の自由さと、管理の難しさ
リモートワークの普及により、「外出できない(療養している)」はずの休職者が、実際には自由に行動できる状況であっても、企業側からは確認しにくい側面があります。
例えば、休職中にカフェでパソコン作業をしている姿を見かけたとしても、それだけで「業務不能(=本当に働けない状態)」ではないと断定することは難しく、客観的な証拠を確保しづらいという実務上の問題があります。
休職不正利用にあたる行為の種類

「休職不正利用」とひと口に言っても、実際にはさまざまな形態があります。以下に主なケースを整理します。
| 行為の種類 | 具体的な内容・特徴 |
|---|---|
| 虚偽・誇張診断による休職申請 | 実際には就労可能な状態なのに、医師と結託して診断書を取得するケース。適正な疾病であれば問題ないが、申告内容と実態が大きく乖離する場合は問題になりうる。 |
| 休職中の副業・別法人業務 | 「就労不能」と申告しながら、別会社や個人事業で実質的な業務に従事する行為。休職手当を受給しながら別種の収入を得るケースが含まれる。 |
| 非疾病的な外出・旅行行為 | 外出困難を理由に休職しているにもかかわらず、旅行・飲食店・コンサートに出かける行動。SNSに投稿するケースも発見される。 |
| 休職手当・社会保険の不正受給 | 業務不能状態ではないにもかかわらず、休職中の手当・社保を受け続ける行為。法的には詐欺・不当利得返還請求の対象になりうる。 |
| 就業意思のない長期化 | 故意に財政的動機から休職を長期化するケース。骨休めの延長や複数回の休職申請が繰り返される例もある。 |
実際にあった相談事例

関東圏・不動産会社 人事責任者(50代男性)からの相談
営業職として勤務していたE氏は、「うつ病による就労困難」という診断書を提出し、長期休職に入りました。当初は会社も治療を優先し、休職手当の支給を継続していましたが、次第に以下のような情報が耳に入ります。
- 平日の昼間に外出している姿を見たという証言
- SNSで旅行や外食の投稿がある
- 副業らしき仕事をしているという噂
診断書がある以上、軽率な対応はできず、かといって放置すれば制度の不正利用となる可能性も否定できない状況でした。
そこで、弁護士と相談のうえ、探偵による行動調査(人事調査)を実施しました。
調査はプライバシーや法令に配慮し、「治療の妨げにならない範囲」「業務可否の実態確認」に限定して行われました。その結果、以下が判明しました。
- 平日昼間に長時間の外出を繰り返している
- カフェやコワーキングスペースでPC作業をしている
- 不動産とは別業種の業務に関与している様子
- 体調不良を示す兆候が行動上では確認できない
- 会社への申告内容と生活実態に明確な乖離がある
これらが日時・場所付きの記録として報告されました。会社は調査報告書をもとに、主治医への意見照会・本人への面談を実施。
結果として、虚偽申告の可能性が高いと判断され、休職手当の支給停止と就業規則に基づく対応が取られました。
※実例をもとに一部内容を変更して掲載しています。
放置するリスク―企業にかかる五つの危機

虚偽申告の可能性を曖昧なまま放置すると、企業には以下のリスクが生じます。
| リスク種別 | 具体的な影響・警戒点 |
|---|---|
| 休職手当・社保の不正支給 | 実際は就労可能な状態の人物に、企業側が不当な経済的支援を続けることになります。金額によっては不当利得返還請求の対象になりうるケースもあります。 |
| 真面目な従業員との不公平感 | 実際に激務している従業員が不公平を知れば、不公平感や不満が生まれ、組織全体の士気低下につながります。 |
| 制度全体への不信感・士気低下 | 「バレない」「会社は管理していない」と周囲に受け取られると、真面目な従業員のモチベーション低下につながります。 |
| 他の従業員による模倣 | 一人の不正利用が現場に知れ渡れると、類似行為が横行するリスクがあります。成果主義文化の強い不動産業界ではとくに注意が必要です。 |
| 会社の管理責任を問われる | 実態確認の形跡がなく不当支給が続いた場合、今後の労務トラブルに発展した際に会社側の管理責任を問われるリスクがあります。 |
探偵による人事調査でできること

人事調査では、診断の是非を判断するのではなく、「申告内容と実際の生活・行動が一致しているか」を客観的に確認することが目的です。
以下の指標を冷静に記録し、社内判断・弁護士相談に使える形で報告します。
| 調査項目 | 内容・確認目的 |
|---|---|
| 外出頻度・時間帯 | 「外出不能」と申告しながらの外出実態を日時付きで記録する。 |
| 就労に近い行動の有無 | カフェ・コワーキングスペースでのPC作業・商談が疑われるシーンなどを確認する。 |
| 副業・業務関与の兆候 | 別会社・個人事業への関与を示す行動や場所への立ち寄りを確認する。 |
| 活動レベルと申告内容の整合性 | 「就労不能」と申告している内容と、実際の外出・活動レベルの矛盾を客観的に導き出す。 |
| 常習性・継続性の有無 | 複数日の調査によって「1回限り」ではなく「継続的に行われている」ことを立証する。 |
インターネット上のSNS投稿内容やコワーキングスペースでの実態など、企業内部だけでは把握できない情報を第三者の立場から客観的に記録することが、人事調査最大の強みです。
自社対応だけでは難しい理由
企業が独自に調査しようとすると、プライバシー侵害や不当な扱いと受け取られるリスクがあります。また、直接の聞き取りでは本音を引き出せず、証拠がないまま対立が深まるケースも少なくありません。
特に休職者との対応においては、背後に「影の存在(第三者の入れ知恵や支援者)」がある場合があり、企業側の単独対応が二次的トラブルに発展するリスクもあります。
弁護士・社労士と事前に連携したうえで、第三者である探偵の客観的な記録を根拠とすることで、はじめて事実に基づいた指導・対応が可能になります。
証拠が揃いた後の対応フロー

探偵調査によって確実な証拠が収集できた後は、以下のステップで対応を進めていくのが一般的です。
先述した背後の存在(入れ知恵をする第三者など)を念頭に置き、弁護士や社労士と緊密に連携しながら進めることが重要となります。
| ステップ | 対応内容 |
|---|---|
| STEP 1 | 報告書・記録をもとに主治医へ意見照会を実施する |
| STEP 2 | 弁護士同席のうえ、当該者への面談・事実確認を実施する |
| STEP 3 | 就業規則に基づく処分の実施(休職手当削減・停止・懲戒処分等) |
| STEP 4 | 不当利得が発生している場合は返還請求・法的手続きの検討 |
| STEP 5 | 休職制度・就業規則の見直し、再発防止策の導入 |
再発防止のための対策
証拠収集による問題解決と並行して、以下の再発防止策を実施することで、将来的なリスクを大幅に軽減できます。
休職制度・手当支給条件の明文化
疾病と診断された場合は「就業規則第✕条に従い」といった抽象的な内容ではなく、「主治医の定期診断書の提出」「月に1回の主治医面談報告」など、「具体的な行動要件」を規程に盛り込むことが重要です。
定期的な状況確認ルールの整備
休職中の従業員との連絡間隔や面談タイミングを規則化することで、コミュニケーションの途絶による情報の空白を防ぎます。会社側が「避けている」という印象を与えないための体制づくりが重要です。
診断書だけに依存しない判断体制
診断書は定期的に提出してもらうとともに、主治医への意見照会や産業医の活用など、多角的な判断体制を導入することが重要です。
外部専門家(弁護士・社労士)との連携
独自判断で動いた後に弁護士相談になるよりも、弁護士・社労士と事前に連携することで、リスクを最小化した対応が可能になります。
よくあるご質問(FAQ)
本当に病気だった場合、問題になりませんか?
調査は診断を否定するものではなく、申告内容と行動の整合性を確認する目的で行います。本当に就労不能な方の場合、調査を通じてその事実が確認されることになり、問題になりません。
調査は違法になりませんか?
探偵業法・個人情報保護法を遵守し、合法的な範囲内で実施します。弁護士と事前に連携したうえで実施することで、適法性を確保します。
調査結果はどのように使えますか?
面談資料、主治医への意見照会、弁護士相談などに活用できます。就業規則に基づく対応の正当性を補強する資料として活用できます。
調査費用・期間は?
調査内容により異なりますが、数日~数週間で完了するケースが多い傾向です。まずは詳細をお聞きして最適なプランをご提案します。
違和感を感じた時こそ、冷静な事実確認を
『病気を疑うこと』は、企業にとっても非常に難しい判断です。
だからこそ、感情や不満ではなく、事実を静かに確認することが重要です。証拠のある客観的な記録があればこそ、事実に基づいた適切な対応が可能になります。
光武商事株式会社では、不動産業界向けの人事調査・行動調査を慎重かつ適法に実施しています。調査から再発防止支援まで一貫対応。匿名での事前相談も可能です。
